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世界のはじまり

 この世界は、かつて、大陸がひとつでありその周りは大海に囲まれていた。幾度かの地殻変動を経て、3つ、5つと分離していくうちに、大陸は様々な変貌を遂げていった。空に届きそうなほど猛々しい山が連なり、降り注ぐ雨が集まり山々の狭間から川となって流れ出し、それにより陽の光と鉱物が合わさってみずみずしい植物が育った。

 そうして世界が種々雑多な姿に変わると同時に、たくさんの生物がうみだされた。ことばと知能を携えたヒトが誕生してからは、その変化はより加速度を増した。そしていつしか、存在を優劣によって区別されるまでになった。

 5つに分離された大陸のうち、より優位に立つ人種は中心部に集まった。その場所を「上界」と呼び、さらに世界を統治するほどの権力者が存在する地域を「鈞天」と呼んだ。鈞天を囲うように位置する地域を、それぞれ黒天(北)、赤天(南)、白天(東)、蒼天(西)と区別され、それらは「地界」とひとくくりにされた。

 鈞天のさらに中央には国王が住む神殿があり、その周辺を『生の神殿』、『老の神殿』、『病の神殿』、『死の神殿』が覆うようにして聳えている。上界に住むひと「上界人」として魂を具わった者はまず『生の神殿』で洗礼を受けて、この世界で生きる権利を得なければならない。そのほかの神殿では、神に仕える者として修行を為しえた者に恩恵を与え、すべてを了した者に『神仙』という称号・地位とともに、国王に仕える権利を得ることができるという。

 果たしてそれぞれの神殿でどのような修練がなされたのかは、携わっていた者たちが一般的に公にしておらず謎に包まれていた。なお修行の地としての役割以外では、現代でいうところの「介護施設」「病院」「寺院」としての顔ももっている。